発展:非営利目的使用を定める38条の解釈――複製権、公衆送信権等3
記事作成:2016年4月
問題
ネット上でイラストの無断転載をしている人に注意をしたら、「著作権法38条を知らないの?」と言われました。無断転載を認める法律なんて本当にあるのでしょうか。
著作権法第38条
1項 公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもってするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。……
2項 放送される著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、有線放送し、又は専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として自動公衆送信……を行うことができる。
3項 放送され、又は有線放送される著作物……は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、受信装置を用いて公に伝達することができる。通常の家庭用受信装置を用いてする場合も、同様とする。
4項 公表された著作物(映画の著作物を除く。)は、営利を目的とせず、かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、その複製物……の貸与により公衆に提供することができる。
…………
こんな条文があります(「有線放送」など細かい語の定義は著作権法の最初の方に書いてありますので気になる方は各自確認をお願いします)。この条文の適用を受ける典型的な例は学校の文化祭で、
「タダでやるなら著作物を上演したり演奏したり上映したり口述したりしていいよ」(38条1項)といっています。
すると、こうした疑問が思い浮かぶと思います。「じゃあ、お金が絡まなければ無断転載もいいってこと?」考えてみたいと思います。
まず、この「営利を目的とせず」というのは完全にタダであることが必要です。学校の文化祭の入場料もダメ、チャリティショーでもお金を払うならアウト、たとえ無料でも「企業の宣伝目的のコンサートで、あとで売り上げ増加が見込める」みたいなものだったらダメです。(注1)
はじめの問題を考えましょう。
38条1項。
公衆送信は認めていないですよね。ネット上のイラスト無断転載を認めていません。この点、中山先生は、「公衆送信(2条1項7号の2)は、著作者の利益を害する程度が大きいので」と説明されています(注1)。
2項。「放送される」は「放送された」とは別です。
放送と同時の公衆送信ならよい、といっているのです。放送の電波の届きにくい地域に中継所が再放送するようなイメージです。「放送された」著作物を手元に「複製」しておいて、あとになってネット上に「公衆送信」したらダメです。
3項は、文の構造がわかりにくいですが「通常の家庭用受信装置」を使ったら営利でも非営利でもいい、ということで、病院の待ち時間に見るテレビ放送とかが該当します。
4項は図書館のことだと思って読めばすんなり頭に入ると思います。
5項は長いので割愛しました。ともかく、
38条はネット上の無断転載を認めません。
注
1)中山信弘(2023)『著作権法〔第4版〕』有斐閣、p.448