著作権法だけじゃない! 商標法・不正競争防止法1
記事作成:2016年4月
問題
知的財産を守る法律はどんなものがあるでしょうか。
ここからは商標法と不正競争防止法についてお話します。
「ちょっと待って、いったい法律はいくつ出てくるのよ!」
まずはそこからご説明しましょう。
法律はたくさんあります。しかし、例えば、弁護士の先生が大量にある法律をすべて知り尽くしているかというとそうではありません。法律の中には特に大事なものとそうでないものがあります。特に大事なものをしっかり勉強しておけば細かい法律はその応用で、必要となったときに条文を見ればなんとかなるのです。
知的財産に関係する法律で特に重要なものとして、次の6つが挙げられます。
- 特許法
- 実用新案法
- 意匠法
- 商標法
- 著作権法
- 不正競争防止法
これらは、立ち位置としては著作権法と同じく「公法と私法の真ん中あたり」です。忘れてしまった方は『
法律の世界をふたつに分けよ! 刑法・民法と著作権法の位置1』を復習してみてください。
これらを勉強するならば、知的財産に関係する国際条約も一緒に学びます。ですから実質7科目ですね。(他には、方向性は違いますが種苗法とか、海賊版の輸入対策で関税法とかも実務的にはかかわってきますが、このサイトの目的上割愛いたします。)
さて、これらの法律はみんなで協力して知的財産を守ります。「特許法・実用新案法じゃ手が届かない!」「心配はいらない。文化作品は著作権法が守るよ」「工業製品のデザインは意匠法が守る!」「商標法も手伝おう」「ああ! それでもこぼれてしまうものが!」「ははははは。大丈夫だ私がいる」「不正競争防止法……!」こんな感じ。
それぞれの法律のイメージはというと、
特許・実用新案・意匠・商標法は「守る範囲は狭いけれどしっかり守る!」
著作権・不正競争防止法は「守りは緩めだけど手広く守る!」
です。そして例えば、「この不正行為は商標権は侵さないけれど著作権は侵すよ」とか、「この不正行為は意匠権も商標権も著作権も侵すし不正競争防止法にもひっかかるよ」とかいったことがありえます。
上に挙げた法律のうち、二次創作に特にかかわるのは著作権法のほかに
商標法と
不正競争防止法でしょう。というわけで、それぞれの第1条を見てみたいと思います。あっさりでかまいませんので、目を通してみてください。法の大きな向きをつかむのは大事です。
商標法第1条
この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。
不正競争防止法第1条
この法律は、事業者間の公正な競争およびこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
なんだか「業務上の信用」とか「需要者の利益」とか「国民経済の健全な発展」とか書いてありますね。本当は商標法と不正競争防止法は別々にお話するべきなのでしょうが、「同人・二次創作に関係する法律を説明する」という目的上、かんたんにして一緒に説明します。
一目見れば「あ、あの会社のものだな」というのがわかるもの、ありますよね。それは
文字でも図形でも記号でも立体物でも愛称でも構いません(注1)。「Panasonic」という文字を見たら性能のいい電化製品を思い浮かべるでしょうし、赤・緑・黄色の「7」を見たらコンビニを思い出すでしょうし、ペコちゃんを見たらおいしそうなケーキを思い浮かべるでしょうし、「マック」とか「マクド」とか言われたらハンバーガーを思い出すのではないでしょうか。
この商標とか商品表示とかいったものにはいくつもの役割があります。まず、一目でどこの会社の製品なのかわからせる、つまり
出所を表示する機能があるわけです。次に、上のPanasonicの例のように、その会社の製品の
品質を保証する機能。さらには、Mのマークを見たらハンバーガーを買いたくなる、買いたくさせるというもっと積極的に商品を
宣伝広告する機能があるのです。
ここで、新しく電化製品を製造・販売する会社を作った人が、会社名を「Panasonic」にしたとします。そして残念なことにその人の電化製品の質は本家「Panasonic」の製品より劣っているものだったとします。すると、お客さんの側から見れば「最近Panasonicの質が落ちたなあ」と思うでしょうし、Panasonic側としても本来なら売ることができたはずの商品が売れなかったということになり損をします。一方新しく会社を作った人だけは「Panasonic」の名前を借りたおかげで設立当初から絶好調。やはりずるいと思いますよね。
このように、
ある企業とか商売の信頼が「なにか」に表れているとき、それを保護するのが商標法や不正競争防止法です。その「なにか」のうち、登録されているものが商標法で、登録されていないものでも不正競争防止法で守られる、と考えてくださればよいでしょう。同人グッズや絵柄を模倣した同人誌などで特に意識しなければなりません。
注
1)商標法2条1項各号、アメックス事件(最高裁平成5年12月16日第一小法廷判決)
商標はこちらで検索できます。→『
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